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伝統に学ぶ、プログレッシブな「こねライフ」

突然ですが、粉をこねるのが大好きです。
小麦粉、米粉、どちらも違った魅力があって楽しいですね。

ぼそぼその粉と水が仲良くなって、つるりとまとまるまでの過程もたまりませんし、油分によって粉たちの縁が切れて再度結ばれる様なんかはもう、本当にほれぼれするような美しさです。グルテン万歳。澱粉愛してる!

今でもそこそこの頻度でこねライフを満喫していますが、学生時代は毎日午前中にパンを作って焼きたてを午後の授業に持参したり、毎晩すあまを試作したりするほどの粉狂いでした。

「粉と水」を「生地」にする過程は、粉との対話そのものです。目で、手で、その様子をつぶさに観察しながらまとめたり伸したりする作業は、ふしぎと心を落ち着かせます。

コミュニケーションが足りないと、粉と仲良くなれないと、いい生地にならないんですよね。まとまらなかったり、伸びなかったり、切れてしまったり。

自家製担々麺。ウー・ウェンさんのレシピで

大好きな北京出身の料理研究家、ウー・ウェンさんは、水加減やこね終わり、伸す過程での加減を「粉に聞く」と表されていました。まさに粉との親密度の高さを語るに足る表現ですね。

台湾旅行での朝ごはん。豆漿と厚饼夾蛋

先日訪れた台湾では、よりプログレッシブなこねライフを体感できました。

朝ごはんを求める客で賑わう豆漿屋で、厚饼夾蛋の生地を伸すおばさま。両手を広げたくらいある大きな生地をするするとのばし、油を敷き、ぱたぱたとたたんでいく、その手際の良さたるや!

夜、焼き小龍包屋台で。家族経営らしく、ご両親が小籠包を焼いていて、子どもたちが気だるげに生地を繰っている……という微笑ましい光景とは対照的に、彼らの手の中の生地は、実に気持ちよさそうにのび、広がり、大きな餡をやすやすと飲み込んでいました。その様はただひたすらに美しく、思わず見惚れて立ち尽くしてしまったほどです。

もうとにかくみんな、粉と仲良しなんですね。土壌・文化的な側面と、ひたすらに粉と向き合ってきた経験とが生地に如実に現れていて、このときほど自分のこね不足を痛感した日はないかもしれません。

ほうとう、ひっつみ、はっと、うどん、おやき……などなど、日本にも、稲作に向かない土壌や気候の地域には小麦のこねライフが色濃く根付いているといいます。共通の食材による文化のつながりを感じますね。
こちらも今後掘っていきたいところです。

さて、すっかり長くなってしまいました。最後に、ウー・ウェンさんの本から一節をご紹介して締めたいと思います。

小麦粉が手になじむ頃、手が小麦粉になじむようになる頃には、中国小麦粉料理の世界はますますあなたにとって興味深いものになることでしょう。

ウー・ウェンの北京小麦粉料理 より

あなたも、すてきなこねライフを始めてみませんか?

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「セオ商事のプログレッシブ」Advent Calendar 6日目でした。

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