プログレの国連大使を決める
プログレッシブを掲げておいてこれを避けてとおるのも不自然なので、ここでいったん個人的おすすめのプログレッシブ・ロックを国別で見ていこう。
イギリス
YES
Soundchaser
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世界の主要プログレの大半を生んだイギリスからなんと1組だけを選ぶという斬新な試み。この貴重な1議席に誰を選ぶかで、その人のプログレ観のすべてが露わになる。プログレのホグワーツではこれによって寮分けを行う。
フランス
Magma
Theusz Hamtaahk
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自分たちの音楽に最も合う響きを求めた結果、「コバイア語」という独自言語を生み出してしまったという、プログレ界でも随一のスケール感を誇る怪物バンド。小倉優子もびっくりの惑星移住バックストーリーがあるなど一見ゲテモノ扱いされそうな空気もあるが、ジャズやクラシックに裏打ちされた確かなミュージシャンシップとストイックさ、フランス由来の(?)スタイリッシュな音像が魅力。Zeuhl(ズール)と呼ばれるサブジャンルを築き、日本にまで高円寺百景などの追随バンドが。
カナダ
Rush
YYZ
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モールス信号のユニゾンで繰り返す冒頭の増四度リフが有名なこの曲。いかにもプログレっぽい要素を詰め込みまくった細切れの展開が、まさに「ぼくのかんがえたプログレ」。
アメリカ
Frank Zappa
Inca Roads
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技術的要求が高すぎて、往年のバンドメンバーだけでなくファンにも異様な人が多くて怖い。在野精神の塊でなおかつ多作だったため、ヒッピー、MTV、ディスコ、宗教、ギャル、アル・ゴアの奥さん、売れてて気にくわないバンド、などなど森羅万象をディスりながら30年弱のキャリアで62枚ものアルバムを残した。
オランダ
Focus
Hocus Pocus
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中高生が真似したくなるギターリフ、オルガン、変なボーカルパート。ヒットするプログレソングの鉄板要素が三拍子揃ったこんな名曲を生んだにも関わらず、ライブでは毎回アレンジを入れすぎて原曲の跡形もない。ヒットしてたまるかという心意気がいかにもプログレ。
ドイツ
該当者なし
おっ……?
イタリア
Area
Diforisma Urbano
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重音唱法などの特殊唱法の名手で、世界的にみても唯一無二のヴォーカリストであるデメトリオ・ストラトスがいたことで有名なバンドだが、ほかのメンバーも逸材揃いだということを忘れないでほしい。民族音楽をバックボーンとしているため、変拍子にも作為的なイヤらしさがなく、シンセの音まで民族楽器の延長に聞こえてくる。人間の声の限界に挑戦しつづけた天才のビジョンが、大衆(一般プログレファン)にも楽しみやすい形で提供されたことは心底ありがたい。
スウェーデン
Samla Mammas Manna
Dundrets Fröjder
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ちょこまかしてるわりには結構ゆるい演奏と、フォークソングのような唄、本格的なキース・ジャレット風の奇声で、よくわからないけど牧歌的な村人プログレのような世界が浮かび上がってくる。
日本
国産プログレの市場シェア1位ではないかと思われるドラマー、吉田達也氏の数あるユニットのひとつ。適当な感じで概念の本質に迫る低予算音響ユニット「赤天」も必聴。
ソ連/ロシア
Вежливый отказ
Гражданская война: наступление
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プログレ好きの間でもなぜかあまり注目されていない国、ロシアからのエントリー。意外にもダサくないというか、本来は完全におしゃれな音楽を作る人たちがわざと少しだけツッコミどころを加えながら調整してる感じが腕利きっぽい。
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セオ商事のプログレッシブ Advent Calendar 11日目。セオ商事のメンバー3人が「プログレッシブ」をテーマに25日間、交代で記事を書きつづけます。