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このXXがプログレッシブ!2017

もうすぐ年の瀬ということで、2017年に出会った様々な作品から、ジャンル別に、勝手に「プログレッシブで賞」の表彰をこころみる企画です。
各作品の内容や評価自体は専門家の論にお任せするとして、ここではそれぞれのプログレッシブさのみを簡単に記していきたいと思います。

映画編

入江悠「ビジランテ」 ― 暴風プログレッシブ

「堕ちていく」三兄弟を中心に据えながら、様々な角度から「今の日本」をじりじりと炙り出す作品。
全員が文字通り命懸けで人生を一つひとつ選択していく様は、目を逸したくて仕方がないものばかりなのに「何が何でも見届けなければ……!」と息を止めて見入ってしまいます。熱量というか、質量がものすごい。それは演出の妙と、役者さん全員の怒涛なまでの追い込みによる「実体」感によることがうかがえます。この暴風っぷりは、ぜひ劇場に身をなげうって体感してほしい!

音楽編

坂本龍一「async」「async - Remodels」 ― 多指向性プログレッシブ

メンバーが音楽に明るすぎる弊社の中で、音楽編を持ってくるのは正直ものすごく怖いのですが……アルバム全体の練度、密度の高さで選出しました。まさに、肥沃な土壌に裏打ちされた多指向性プログレッシブ!
Remodels の豪華っぷりもさすがです。どちらのアルバムも「async(非同期)」にじわじわと、様々な形で人に寄り添っていく予感があります。

ゆるふわギャング「MARS ICE HOUSE」 ― 無指向性プログレッシブ

async を多指向性と置いたので、こちらは無指向性プログレッシブ代表として選出。ゆるふわギャングは存在そのものがプログレッシブ(説明放棄)。
この、すりガラス越しのネオンを集めたような雰囲気が好きです。
ゆるふわギャングだけでなく、日本の今のトラップ・ヒップホップシーンはとても面白いしカッコイイですね。

漫画編

米代恭「あげくの果てのカノン」 ― 鋭角プログレッシブ

「SF」と「恋愛」というとあるあるな感じの取り合わせに聞こえてしまうのですが、その組み合わせ方が本当に恐ろしい。
人間は変化するし、慣れるし、適応する生き物です。そうしないと生きていけない生き物です。昨日の自分と今日の自分は同じとは限らない。思想も、好みも、他人との関係性も、また。
……ということを、「異生物と戦って損傷した体を異生物で修繕する」というモチーフでもってこれ以上ないくらい容赦なく描き出しているのがこの作品。
漫画なんてと侮ることなかれ。この表現だからこそ描ける鮮やかさ、鋭利さ、エグさがそこにあります。もはや読む自傷行為。震えながら読み切りました。

番外編・ノミネート作品

パク・チャヌク「お嬢さん」
ダニー・ボイル「T2 Trainspotting」
Clark「Honey Badger / Pig」(ライブセットも超プログレッシブ!)
武富健治・又吉直樹「火花」上下
武田綾乃「石黒くんに春は来ない」
阿仁谷ユイジ「テンペスト」
山下和美「ランド」

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セオ商事のプログレッシブ Advent Calendar 2017 21日目でした。

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