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たくさんしゃべる聞き手


以前取材をうけたときに、インタビュアーの方が、わたしの話を聞きながら、たくさん自分の考えを話してくれたことにおどろいた。

それまではわりと一問一答的というか、質問をされて、答えて、そうなんですか、とか、なるほど、とか反応をしてもらって、別の質問、というイメージを持っていたし、そういう形式のものも多かったような気がする。

でもその方は、自分の考えを話すといってもいわゆる「マンスプレイニング」的なものではなく、わたしの話をよくきいて、その上で自分の経験にもからめつつ、一緒に考えてくれる人だった。

▶マンスプレイニング(mansplaining)
man+explain(説明する)の合成語。主に男性が女性に対して、上から目線で偉そうに説教・解説・説明すること。

取材というより、わたしは彼女(女性でした)と共に何かを探究している気持ちになって、普段より自分の考えが深まってたくさん話したと思う。

このとき思った。わたしもいい聞き手になりたい。


いい聞き手って、本当に難しい。哲学対話は「話す」よりも「聞く」ことを大切にする場だから、いつも「よく聞くとはなにか」という問いには直面しているけど「いい聞き手とはなにか」という問いの形でも考えなきゃいけない。

哲学対話
問いについて人々と集まって共に考え、対話する営み。

それは単にうんうん、と聞いているだけじゃなくて(もちろん、じっくりと聞くだけであることが重要な場面もある)こっちもまた自分の考えを話してみたり、共に考える姿勢ということが必要なのかもしれない。

「聞くということをさせていただいております」みたいな妙に卑屈な下から目線でもなく、「聞いてやるが?」ような上から目線でもなく、「異物観察・調査」的な相手を対象化する何様目線でもないあり方って、一体何なんだろう。

そう思うと、やっぱり哲学対話の時のことを思い出してしまう。わたしが何かを探すような表情で、言葉にならない考えを何とか話そうとしているとき、ひとびとはわたしと同じ表情でそれを聞いている。彼らもまた、聞きながらわたしと共に探しているのだ。

たぶんこれは、同じ問いの下に集っているからこそ、可能なのだろう。そこに上下関係はあまりない。誰かがこの問いの「答え」を特権的に持っているわけではないから。

「それってこういうことですか?」と誰かが聞いてくれる。だから、わたしは、ああそうかもとか、いやこうだと思う、などと応答できる。聞き手によって、わたしははじめて考えられるのかもしれない。そしてそれは、聞き手がわたしが探しているものを、一緒に探そうとしてくれているから、可能なのだった。

「よく聞く」というのは、じっくり「聞く」だけじゃなくて、「問う」ということでもある。もっといえば「共に問う」ということなのかもしれない。

いい聞き手になりたいな。そんなことを思っていたら、newQに編集のお仕事が舞い込んできました。

こんなことをしました


横浜市の芸術創造特別支援事業リーディングプログラムYokohamArtLife(YAL)の報告書制作をしました。

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アートディレクションと表紙デザインを鈴木佐知子さんが担当、内容のデザインをnewQメンバー今井が担当、編集をnewQメンバー瀬尾と難波と永井が担当しました。

単に成果を並べるいわゆる「報告書」ではなく、newQならではの視点で"問い"をテーマに編集を行いました。

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各プロジェクトのインタビューを通して、それぞれがどのような問いをもって始めたのか、そしてこの活動を通じてどのような発見があり、今後も抱き続ける問いは何なのかを、まとめています。

活動の振り返りは、各自ではなく座談会として、対話形式で行いました。また「そもそも評価とは何なのか?」という観点でも、専門家にインタビューを行い、根本的に問い直すような立て付けになっています。

▶詳しくはこちら
https://yokohamartlife.yafjp.org/news/307


newQは実は編集もやっている


そう、newQは「"聞く"というのはどういうことなのか」ということを悩みながら、編集もしています。

哲学カルチャーマガジン雑誌『ニューQ』第3号「名付けようのない戦い号」も現在制作中で、5月頃刊行予定です。ちなみにわたしとナンバさんは第3号から編集チームにはいりました。最高に面白い出来になっています。

雑誌『ニューQ』ならではの方法として、さらにより哲学対話に近い仕方で、インタビューや対談も編集部が中に入って、一緒に問いを共有し共に悩んだり考えたりしています。

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情報はこれから徐々にオープンにしていきます。どうぞお楽しみに。

newQはチームやプロジェクトの「問い」を共に考えることで見つけながら、プロダクト開発やサービスデザインをつづけていくサポートをしていますが、編集のお仕事も承っています。

▶詳しくはこちらから
https://newq.theocorp.jp/


書いたひと:永井玲衣(@nagainagainagai

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