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読んでいないけれど この本が面白い 2017

今年といえば「読んでいない本について堂々と語る」スキルの習得にいそしんでいたので、その集大成として今年読んでいないけれど「面白かった!」という本について語ろうと思います。

(みんなの「読んでいないけれど面白かった本(積読本)」についても知りたいです)

<以下、読んでない度の指標>

A : 買っていない(ウィッシュリストに入れた)
B : とりあえず買った(表紙 - 目次 - 前書きくらいは読んだ)
C : 途中まで読んだ

人文哲学部門 : 中動態の世界 意志と責任の考古学 國分功一郎 : C

「哲学研究の世界ではここ100年ほど、自発性、主体性、言い換えれば“意志"の存在が疑われています / 各種ハラスメントで顕著ですが、非自発的同意という事態が日常にはゴロゴロある。」

かつて存在した能動態でも受動態でもない「中動態」という文法から意思決定の新しい側面を紐解く本書。「自由意志の自由とは何か?」が揺らいでいる今まさに読みたい。


音楽部門 : 100年のジャズを聴く : C

少し前まで、ジャズもSFも冬の時代と言われていたのですが、最近どちらも元気なように見えます。30代、50代、70代の3世代でジャズを語るという試み自体が面白く「分断の時代」のコミュニケーション / 合意形成の例としても興味深い。

ジャズの個人名が大量に出てくるので、初心者には難しいかもしれないけれど一緒に掲載されているディスクガイドと一緒に読むと、なお楽しめるはず。


純文学部門 : オクトーバー : 物語ロシア革命 : A

100年といえば今年はジャズと同じく、ロシア革命100周年。今の時代に足りないのは共産成分とばかりに摂取したいところです。U.S.S.R!U.S.S.R!

なんだかんだで知っているようで知らない社会主義ですが「僕らの社会主義 / 國分功一郎, 山崎亮」(読了)を読むと、コミュニティデザインのヒントが多く隠されていることが分かります。

もう一つ本書を読む口実が欲しいとしたら、今年はカズオ=イシグロがノーベル賞をとって史上初のノーベル賞SF作家となったのですが(ガルシア=マルケスをSF作家とカウントしないなら)、そのカズオ=イシグロが本作の著者、チャイナ・ミエヴィルの過去作「都市と都市」(A)の帯分を書いていたりします。


SF部門 : 母の記憶に : A

テッド・チャンにつづく中国系アメリカSF作家、ケン・リュウの2冊目の短編集。プロダクトに続いて「コンテンツも中国系が一番面白い」という方向に世の中は進んでいくと思っているのだけど、そのエモーションや表現のあり方がとても興味深い。なんで読んでいないかというと、初作の「紙の動物園」(面白い)をまだ読み終えていないから。


ビジネス部門 : 行動経済学まんが ヘンテコノミクス : B

今年のノーベル賞といえばリチャード・セイラー。「行動経済学の逆襲」(A)を少し読んだところ、なかなか面白いのですが、あえて記憶の定着、理解をするためには、漫画で表現されているこちらを先に読みたい。(テキストの記憶と画像の記憶では、圧倒的に画像の記憶の方が高効率という研究がある)


デザイン&テック部門 : ツールからエージェントへ。弱いAIのデザイン - 人工知能時代のインタフェース設計論 : C

チャットボットとスマートスピーカーが一般的になった今年、UXデザインの大きな動きとして「AIの活用により、UXの現場がUIからAIへ移行する」という流れがあります。そうなるとUXデザインに必要なスキルも(グラフィック → アルゴリズム)と大きくかわっていきます。

それを踏まえてどのようにAI(タイトルの弱いAIとは、人間の脳のように汎用的でなく、ルンバなど用途を絞ったAIのこと)を設計するかということを考えていきたいと思います。年末の課題図書。


サイエンスノンフィクション : マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ〈この宇宙〉にいるのか : B

「人類が知っていることと知らないことの境界面」というのはどの分野でもとても楽しいです。「どのように境界を広げようとしているか?」そして「どこまでが自明のことなのか」これを毎年観測して、Googleなどがまとめて欲しいと思っています。マルチバース宇宙論はその存在自体が完全に境界の学問。イベントで野村教授のお話しを聞くことができたのですが、大変エネルギッシュで面白かったです。未知に対するモチベーションをあげる一冊。


番外編 : 読んだ本部門 この本が面白い2017


- 勉強の哲学 来たるべきバカのために / 千葉 雅也

読まずに「バカの壁(読んでいない)的な内容かな」とうっかりスルーしかけたが面白かった。ドゥルーズ的なことを平易に、勉強ということに当てはめて書いてある。

- 公的戦闘規範 / 藤井太洋

2、3年後(もしくは10年後になるかもしれない)に起こりうる未来を描くことについての旗手、藤井太洋初の短編集。ドローン、AI、量子コンピューターなど、どれも着眼点とアイデアが面白いです。タイトルは伊藤計劃トリビュートの一編。テロ兵器としてドローンが使われる未来が描かれる。

- テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか?  / ケヴィン・ケリー

今年刊行の本のみ扱うというルールですが、刊行された2014年に読み始めようと思って読み終わったのが2017年なので、ウラシマ読書効果としてカウント。個人的に「テクノロジーとは何か?」について大きな指針と啓示を得られました。次は「インターネットの次にくるもの」を読むぞ。

- 僕らの社会主義 / 國分功一郎、山崎亮

「もし、ロシア革命の時代にインターネットがあったらどうなるだろうか?」というぼんやりとした空想をたまにします。ラッセルをはじめ、イギリス社会主義者の主張がとても興味深い。また、コミュニティデザインについても示唆に溢れる内容でした。

- 自由のこれから / 平野啓一郎

AIを中心としたテクノロジー、そして人文方面からも「自由意志とは何か?」という問いが発せられていると感じた今年。自由意志に対する認識が変わる中、まさにドンピシャなテーマの一冊でした。



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