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プログレッシブ・ペアリング

前回の記事で、エンジニアリングと料理との相似について触れました。

料理とひとくちに言ってもとても幅の広い概念です。今回は料理に馴染みがなくても楽しめる「ペアリング」に着目し、原則をおさらいした上で、最近見つけたプログレッシブな取り合わせをご紹介したいと思います。

ペアリングとは

一般的にはお酒と食事の組み合わせを指すこの言葉。

1. お互いを邪魔しない
2. お互いの美味しさを引き立てる
3. 新しい味わいが立ち現れる

このような組み合わせを指すことが多いかと思います。
※ 個人的には3が一番プログレッシブだと思う!

有名なところだと、生ハムメロン、はちみつレモン、スイカに塩などもれっきとしたペアリングです。それぞれの役割を分解すると、

スイカ+塩:塩気がスイカの甘味を引き立てる
生ハム+メロン:塩気がメロンの甘さを引き立て、逆にメロンの甘味がハムの塩気を抑え食べやすく、またメロンの青臭さをハムの旨味がカバーする
はちみつ+レモン:はちみつの甘味、レモンの酸味が相互に和らげている

と、相関関係にあることが分かります。

シナジー・リアクション

このような味の関係を図にした、「シナジー・リアクション・チャート」を見てみましょう。

Beer&Pub 2014 SPRING Vol.10 より引用

先ほどの例で言うと、はちみつレモンは酸味・甘味の相互作用、すいかに塩は塩が甘味を強める様が図からも見て取れますね。

それではこの原則を元に、組み合わせの奥深さにダイブしてみましょう。

プログレッシブな組み合わせ例

プログレッシブレベル1: カカオ+砂糖+ブラッドオレンジ+マジョラム

マジョラムとはオレガノに似た、ほのかな苦味と甘味を持つハーブです。
チョコレート、ブラッドオレンジ、マジョラムの苦味、ブラッドオレンジの酸味、砂糖の甘味が渾然一体となった味わいはまさに絶妙の一言。
Sbadi の Sicula Terra シリーズではこの他にも「レモンとネペタ(ミント)」「マンダリンオレンジとフェンネル」という組み合わせも販売されています。

プログレッシブレベル2①: 風の森(日本酒)+幸水梨

続いてはお酒と食材の組み合わせ。夏の走りに自宅で試したところ、シンプルながらあまりの美味しさに小躍りしたほどです。

風の森は秋津穂 純米しぼり華。一番スタンダードなものですね。
お酒のフレッシュな酸が梨の爽やかな甘味をふわりと持ち上げ、また梨のさっぱり感が軽やかなお米の甘さを引き立てます。

プログレッシブレベル2②: チーズ+柿+いちじく

もう一品は、秋口に作ってみた「柿といちじくのグラタン」。
秋に採れる果物は、白和え等にもとても映えます。
そこからヒントを得、今回は加熱し甘味とうま味を出すことで、チーズやホワイトソースの塩気と合わせてみました。
結果はなかなかの成功で、単品では出せない複雑な味わいに昇華できました。

こういった実験が出来るのは自宅ならではで、とても楽しいですね!

プログレッシブレベル3: 鯖+いちご+パセリ

先日伺ったビストロ tokiyaで、えっ、あれ、うわーなんだこれ、おいしい!?となった一品。まずは写真をご覧いただきましょう。

「鯖と苺、パセリのテリーヌ」。断面萌えにはたまらないショットです。

パセリの香りと苦味、鯖の塩気と青臭さ、いちごの酸味・甘味・青っぽさのバランスが最高でした。今年のびっくりベストマッチ大賞です。
チャートを引き合いに出しておいて何ですが、きれいに説明できないあたりがシェフの腕の妙というか……。

おわりに

同じ食材でも組み合わせによって様々な味わいに変化する「ペアリング」の魅力、伝わりましたでしょうか?
基本を抑えれば自然とアイデアも湧いてくるものです。ご自宅でも簡単にできますので、これは!という組み合わせを見つけたら、ぜひお知らせください!

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セオ商事のプログレッシブ Advent Calendar 2017 12日目でした。

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