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分からないことのユーザ体験 後編 - 分からなさを実践してみよう! / プログレUX

ビットコイン、スナップチャットのUI、デヴィッド=リンチの作品などなど、流行っているものの多くが分かりにくいものであり、そしてそれぞれの「分かりにくさ」が体型化されていない。

今回は、その"分かりにくさ"という事象そのものを理解し、乗りこなそうという試みの後編となる。

前編 : 分からないことのユーザ体験 前編

中編 : 分からないことのユーザ体験 中編 - 良い分かりにくさとは何か? / プログレUX


良い分かりにくさのデザインパターン

対象の価値を高める"良い分かりにくさの実践"ということで、「どのような分かりにくいデザインが可能か?」ということをまず考えて見たい。

ここで重要なのは、今回目的としているのは「分かりにくさを整理し分かりやすくする」ことではなく、「どのようにして分かりにくく有効なものを作るか?」ということである。

もちろん、これを足がかりに身近な分かりやすいものを分かりにくくリデザインしていくことは可能である。

1. 分かりやすく「分かりにくさ」を演出する

「分かりにくいこと」が分かりやすいとはどういうことか?

これは謎が分かりやすく提示されているということである。ユーザーにまず疑問を持たせ、注意を喚起することで分かりにくさの沼に引き寄せることができる。

例えばサービス名やキャッチコピーなどは「分かりやすい、分かりにくさ」の実践として格好の場である。もし、「人とつながらないSNS」というサービスがあったら「どういうことか?」とすぐに興味を持つことができる。

疑問を持たせることでユーザーの想像力をかき立て、能動的に興味をもってもらうことが可能だ。大事なのは次のアクションを乗り越えるだけの強度を持った謎を提示できるかである。


2. ターゲットを分かってもらえる人にだけ絞る

「ターゲットを絞った方が、結果よく拡がる」という話しをよく聞く。それはどういうことだろうか?

10代後半から20代前半の、動画でのコミュニケーションに躊躇のない若者に絞ったサービス

といったようにユーザ層を狭めると、ターゲットとなるユーザ層以外には"分かりにくさ"が立ち上がる。

"XXで流行っているが自分には良く分からない"

体験していないユーザ体験としてかなり有効である。好奇心旺盛な非初期ターゲットをサービスに巻き込むことが可能だ。


3.最初に多大な投資をさせる

お金や時間をかけた分、やめにくくなるという傾向を利用して、最初に多大な投資を要求することで、分かりにくいことを理解させることができる。

↑ セオ商事の備品。モジュラーシンセ(65万)。使い方が全然分からないが、買った手前、操作方法を学習しないといけないという強迫観念が生まれる。


4. 手段を目的化する(再帰化)

「手段を目的化してはいけない」と良く言われるが、これは人類が手段を目的化しやすいという特性があることの証左である。

例えば、ジャンプの連載漫画は「連載を続けるために、今回の回を書く」という特性がある(読者の人気投票など)。その結果、単話では分かりやすいが、最終的に「どこへ向かうか分からない」という分かりにくさが生まれることがある。

「どうぶつの森」も同じく、最終的に何のためにやっているかは分からないが、とりあえず手元に出てくる分かりやすいタスクを続けてしまうことではまってしまう。


補足 : 分かりにくさのスケール問題

分かりにくさには、ミクロな視点とマクロな視点がある。それぞれ以下のようなものが挙げられる。

ミクロな視点 : サービスのUI / ビットコインを購入する手続き / 物語の登場人物のセリフ
マクロな視点 : サービス全体のUX / 社会現象としてのビットコイン / 物語全体

比較的に「ミクロには分かりやすく、マクロには分かりにくいもの」が受け入れられやすい傾向がある。

逆に「ミクロには分かりにくく、マクロには分かりやすいもの」として、簡単なユーザ情報を登録をするために、わざわざ住所が全角でないといけなかったり、半角カナで入力しないといけないフォームを想像してほしい。

物語だと「主人公も〇〇だった」という安易な発想を深刻に描いた映画(シックスセンス)などが思い浮かぶだろう。

なぜ「ミクロには分かりやすく、マクロには分かりにくいもの」が受け入れられやすいか。それは、

この世の中の多くのものが分かりにくいものであり、それを分かりやすく小分けに教えてくれるから

という仮説を立ててみたい。

なお哲学の専門書など「ミクロにもマクロにも分かりにくい」ものは、ある種の高尚さを醸し出す。


分かりにくさ時代のはじまり

今回で"分かりにくさのユーザ体験"というシリーズは一旦終わりとなるが、これはただのはじまりの終わりである。分かりにくさの世界の入り口を書いたまでで、これからも"分かりにくさ"について考えていきたいと思う。

(ご意見、ご感想。気づいた"分かりにくさ"などあれば、お気軽にお知らせいただけるとうれしいです)

2017年は分からなさ元年?

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セオ商事のプログレッシブ Advent Calendar 2017

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株式会社セオ商事 代表 / サービス設計や企画、漫画の脚本などやっているエンジニアです。THE GUILDメンバー
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