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分からないことのユーザ体験 中編 - 良い分かりにくさとは何か? / プログレUX

ビットコイン、スナップチャットのUI、デヴィッド=リンチの作品などなど、流行っているものの多くが分かりにくいものであり、そしてそれぞれの「分かりにくさ」が体型化されていない。その"分かりにくさ"という事象そのものを理解し、乗りこなそうという企画の第2回。

分からないことのユーザ体験 前編 / プログレUX

今回は「なぜ、あんなに分かりにくいものが流行っているんだろう?」の原因となる"善い分かりにくさ"について考察を深めたい。


良い分かりにくさの分類

さっそく、"良い分かりにくさ"を分類してみたいと思う。

分類1 : 価値が担保されている分かりにくさ

ビットコイン、美術館の中のアート、若者が使っているアプリのUI。これらはどれも他者により価値が担保されている分かりにくさである。

分かりにくいが、理解をすれば何かしらの対価を得ることができるという予測を持って、我々は分かりにくさに立ち向かうことができる。

ビットコインであれば、価値上昇の恩恵にあずかれるかもしれない。アートであれば、その作品のコンテクストを理解することで自分の感受性を広げられることができるかもしれない。若者が使っているアプリを理解すれば、明日の流行を予測できるようになるかもしれない。

価値を担保することで、分かりにくさを解決することが可能である。

分類2 : 理解するたびにモチベーションが提供される分かりにくさ

例えば推理小説で謎が一つずつ解決されるように、分かりにくいことが理解されると人は何かしらの達成感を得られる。分かりにくさを少しずつ理解するごとに達成感、驚き、喜びがあり、そのことが次の分かりにくさを理解しようとするモチベーションとなる場合、再帰的に、より大きな分かりにくさを理解できるようになる。

複雑な機能を持ったソフトウェアでも、チュートリアルで少しずつTipsを理解し、使いこなす喜びが勝れば、多少の分かりにくさは克服できるだろう。

分類3 : 共有できる分かりにくさ

例えば、デヴィッド・リンチの新作を見て「あのシーンはどういう意味があったのか?」と話しあうことができる。分かりにくさというのは、コンテンツが共有されている場合、絶好のコミュニケーションツールである。初対面の人と何気なく天気の話しをしてしまうのは、天気が手身近な分かりにくいコンテンツだからである。

相手より詳しければ説明をすることができるし、相手の方が詳しければ理解に役立てることができる。対話する中で新しい理解を得ることができれば達成感はより高まるであろう。


分かりにくさの要因

これで"良い分かりにくさ"、"悪い分かりくさ"をそれぞれ3パターンに分けることができた。

"分かりにくさ"を乗りこなすために、ここで"分かりにくさ"はなぜ生まれるのか?その要因を考えてみたい。

分かりにくさの要因を整理することで、身近な分かりにくい事象を分解し「何が良く、何が悪く作用したか?」と考察できるようにしたい。

1. 情報過多
情報量が多すぎるが故に、理解が追いつかない。
2. 情報過少
理解するための情報が少ない。 ないしは前提知識を求められている。
3. 退屈
情報から与えられる刺激に対して、時間軸が長く(あるいは空間が大きく)設定されている。
4. 価値観の相違
前提とされる価値観が違うために、理解が難しい。
5. 言語の相違
前提とされる言葉の使い方、意味が違い理解が難しい。
6. 錯誤
与えられる情報に誤りがある。
7. 誤認
与えられる情報を誤って受け取りやすい。
8. 共感不足
前提となる経験、知識、技能がないため共感することができない。

全部で8つ挙げたが、注意したいのは、これらは分かりにくさの要因であるということ。それぞれ、"悪い分かりにくさ"、"良い分かりにくさ"両方の可能性を持つ。

例として、情報過多を取り上げると

情報が多すぎて理解できず、楽しめなかった(悪い分かりにくさ)
情報が多いので、見れば見るほど発見がある(良い分かりにくさ)

と、まったく二つの結果に繋がる場合があるだろう。


次回予告

最終回となる次回は、"分かりづらさの実践"ということで、これまでの考察をもとに、"分かりづらさ"を乗りこなすためにどのようなアプローチが可能か考えてみたいと思う。


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