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女性エンジニア800人に囲まれて思ったこと

初めての一人旅に不安で半泣きになったり、成田空港でアイデンティティについて考え直させられたりといろいろあったが、どうにかこの滞在の主目的である Women Who Code のイベントにたどり着いた。世界中の支部リーダーが集まった1日目のワークショップと、ベイエリアの女性エンジニア800人が参加した2日目のカンファレンス、それぞれで得られた知見を紹介したい。

1日目 WWCode Leadership Summit

まずは、世界中の都市にある WWCode 支部のリーダー陣のうち、今回集まることのできた80人ほどで行ったワークショップ。私も東京代表として参加。

金銭的バックアップで示す本気度 ── これだけの人数に渡航費を用意して呼び寄せている。個人からの寄付も多少はあるだろうが、主にスポンサー企業からの支援で成り立っているのだと思う。企業側にも宣伝やリクルーティングという明確なメリットもあるにせよ、WWCode のような活動の社会的意義が広く認められているのだと実感する。

組織力がすごい ── NPO本部には社員や理事会もいて、データを集めたり戦略を立てたりして全支部を統括している。想像以上にプロフェッショナルな運営で、確かなミッションをもった団体であることを再確認した。とはいえ、東京支部を立ち上げた Himi さんによれば最初からこんなだったわけではなく、少しずつ拡大・組織化されて今に至るようだ。

Educate ではなく Elevate ── 世界的にみると、会員の大半はミッドキャリア以降の職業エンジニアであり、学生や初学者がメイン層ではないらしい。そのため、educate というよりは elevate(キャリアアップや、発信・登壇などによるビジビリティの向上)に重きを置いているとのこと。少なくとも米国では、女性エンジニアの数の少なさは単純なパイプライン問題ではないとされており、エンジニア職に就いた女性の41%もがいずれ業界を離れていくということが問題視されている(男性は17%)。つまり業界に入ってくる女性を増やすだけではだめで、業界に入った女性がさまざまな理由でやめていかないように、そしてもっと高いところに到達できるように、環境を改善したり支援をするのも大切だと言われている。

テック業界では英語が基本らしい ── ヨーロッパ、南米、アジアなどの非英語圏からの参加者も多かったので、コンテンツのローカライズや、マルチリンガルな参加者層をイベント時にどうやってまとめているのかを聞き出そうと思った。が、意外にも「イベントは英語で行う」という支部が多かった。WWCode Tokyo は原則日本語としているものの、参加者には日本語を母国語としない人も多く、そして日英バイリンガルも多いので、なんだかんだでごちゃ混ぜになっている。英語に苦手意識のある人が参加しづらくなっているのではと不安になることもあるが、英語ができなくても、日本語ができなくても、誰でも安心して参加できる場にしたいと思う。

リーダーたちの年齢、経歴はさまざま ── 20〜30代だけでなく、40〜50代のような人もちゃんといて、年齢層が偏っていないのが印象的だった。身の回りにこのような先輩女性がいないと、10年後20年後の自分がどうなっているのか想像しづらく、「そういう年齢までできる仕事じゃないのかな?」みたいな考えを無意識にもちやすい。円熟した人たちがちゃんと後進のメンタリングをしているのが嬉しかった。なかには、世界的大企業でVPレベルまでいったような人が「今はリタイアしてコミュニティ活動に専念しているの」なんて言っていて、理想的な好循環だと思った。


2日目 Women Who Code CONNECT

年に1回、WWCode 主催で行うカンファレンス。今年は Twitter 本社で開催され、800人ほどの参加者(主にサンフランシスコの女性エンジニアや、テック業界の女性)が集まった。登壇者のほとんどが女性で、トピックは技術からキャリアまでいろいろ。

(カンファレンス自体の私のライブツイートまとめはこちら

肌で感じる、エンジニアの売り手市場 ── 誰と話してもひしひしと感じたのは、ここは機会に溢れているということ。あらゆる職場から選び放題という状態で、待遇もものすごくいい。非エンジニア職からキャリアチェンジしてきたというある女性は、「長年やってきてその筋のベテランとして稼いでた前職の年収を、1年目の新米エンジニアとしての年収が余裕で上回っている」と憤慨していた。こっちのエンジニアが回覧しているという匿名の年俸情報スプレッドシートを「実際こんな感じだよ」と見せてもらったが、想像を超える水準であった。国内外から多くのエンジニアがここに集まってくるのも納得だ。

「女性エンジニアっぽさ」なんてない ── 経歴、人種、性格、服装、もうなんでもありで、孤高のハッカーからファッションモデルのような人まで、すべてを受け入れる居心地のいい空間だった。これだけの人数に囲まれると、「女性エンジニアである」という感覚は完全に消え去り、人間としての個性だけが見えてくる。「こうなるべき」なんて型はなくて、好きなことに興味をもって、好きな格好をして、好きなテンションで生きていればいいんだなと思った。

妥協せずに自分の居場所を見つける ── 会社は星の数ほどあるのだから、今の会社のカルチャーや仕事内容が合わないなと感じるならどんどん次を探すべき。そして、そのまた次にやりたい仕事につながるような仕事を選ぶべき、ということを学んだ。適応力の高い人ほど今いる環境に自分を合わせようとしてしまいがちだが、必ずしもそれが正しい選択ではないのだろう。


最後に

800人でも多いと思ったが、なんと2万人近く(!)の女性エンジニアが集まるようなカンファレンスもあるらしい。海を越えてこういう体験をするとぐっと視界が開けるし、貴重な機会をいただけて本当に感謝しかない。ここで得たものを WWCode Tokyo の活動や自分の仕事に存分に活かしていきたい。

しかし、渡米前からあんなに弱音を吐いていたのに、最終日にもなると「あれ、なんかこのまま住めるんじゃないか……?」ぐらいの大袈裟な自信も湧いてきて、人って4日間でここまで変われるんだなと我ながら感心した。大人の階級を2ランクは昇進したと思う。こんなことならもっと早く一人旅に出ればよかった!