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社会が見える英単語(2) — privilege


privilege

【名詞】プリビレッジ

すべての人が有するわけではない特別な権利や利益、有利さ

「すべての人に本来的に備わっている、剥奪されてはならない権利」を指す right としばしば対比される概念。たとえば、横柄な態度で月初めにお小遣いをもらいにいくと、「小遣いは right じゃなく privilege だ。そんな態度じゃ一銭もやらんぞ」と親に叱られる。胸を張って主張していいのが right、ありがたく享受すべきなのが privilege、といったところだ。

1日1時間までならテレビゲームをしてよい、金曜日だけならピザを食べてよい、などと子供が楽しめるように譲歩してやっても、いつの間にかそれが当然の権利であるかのように思い込んで調子にのってしまう。そのため、家庭でも学校でも、わりと小さいころから right と privilege の違いを叩き込まれる。

privilege の政治的含意

もちろんこの違いは政治においても重要な意味をもっている。医療保険、生活保護、義務教育…… 限られたリソースを再分配する上で、どこまでが right でどこからが privilege なのか?

去年、ミスUSAが国民皆保険について問われ、「医療が受けられるのは privilege だと思う」と答えて大炎上した。高額な医療費が払えない人たちの生存権を否定しているかのようにとられる回答だったのだ。後日、「自分は公務員として運よく医療を受けられる立場にあるので privilege だと言った。すべての人にとって right となることを望む」と釈明した。

本心は不明だが、仮に普遍的であるべきと思う権利でも現実問題として普遍的に行き渡っていない場合、ありがたく恩恵を受けている自分は privileged だと思ってますよ、当たり前のことだなんて思ってませんよ、という気持ちになるのもわからなくはない。

無自覚の privilege に目を向ける

このようにセンシティブな語用の求められる単語だが、もうひとつ知っておきたい現代的な側面が、戒めの表現としての privilege だ。

「特権階級」というと大袈裟に聞こえるかもしれないが、不平等な社会構造のなかで、得をしがちな属性というものがある。アメリカでいえば、白人であること、男性であること、性的にストレートであること、心と身体の性が一致していること、お金に困らない家庭で育ったこと、などが頻繁にあがる。広くいえば、健康であること、容姿がいいこと、平和な国に生まれたことなども特権属性だろう。

冒頭の子供の例と同じで、ずっと当たり前に利益を享受していると、自分の社会的アドバンテージにいつしか無自覚になってしまうのが人間だ。自分の有利な境遇を棚に上げて自己責任論を振りかざしたり、つかんだ成功は100パーセント努力の成果だと勘違いしてしまうことがある。

そういった無自覚さを指摘するフレーズとして
・Check your privilege(自分の特権を考えてみよ)
・That’s your privilege talking(あなたは特権的立場からものを言っている)
などが最近では定型句となっている。

自分は弱者なのか、特権階級なのか、それとも普通なのか? おそらくひとことで片づくほど単純ではない。自分の privilege をチェックしたとき、どんな世の中が見えてくるだろうか。


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【社会が見える英単語】は、多様性にまつわる英語圏のキーワードを取り上げながら、日本ではあまり馴染みのない概念を紹介していくシリーズです。

▼ 過去記事

社会が見える英単語(1) — woke


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