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社会が見える英単語(3) — dog whistle


dog whistle

【名詞】ドッグ・ホイッスル

一部の人にだけ伝わるように使用される婉曲表現

大っぴらに言えない差別的なメッセージを、あからさまでない形で支持層に届けるための政治的な発言手法。人間には聞こえず犬だけに伝わる高周波の犬笛のように、見かけは差別用語ではないものの、特定の層にはしっかり通じるよう戦略的に使われる言葉。

よくある犬笛語

inner city
逐語的には「都心部」を指す inner city や urban などの言葉が、「白人が出ていってスラム化した過密地区」を指すようになり、転じて「黒人」や「怠惰で犯罪を起こすばかりの黒人やヒスパニック」のイメージを喚起する犬笛語として使われることが多くなった。

Barack Hussein Obama
反オバマ陣営がオバマを過剰にフルネームで呼びつづけることで、「イスラム教徒=危険」という考えをもつ人たちに「フセイン → ムスリム → テロリスト」といった負の連想をすり込む意図があったとされる。

traditional family values
伝統的な家族観、すなわち男女が夫婦となり子供をもうけることを良しとする価値観のこと。LGBTの権利平等化に反対だったり、女性の社会進出をあまり快く思っていない政治家が、「アンチ○○○」と名言せずにクリスチャン保守層にアピールするときよく使う。


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【社会が見える英単語】は、多様性にまつわる英語圏のキーワードを取り上げながら、日本ではあまり馴染みのない概念を紹介していくシリーズです。

▼ 過去記事

社会が見える英単語(1) — woke
社会が見える英単語(2) — privilege